2. 音データの基礎知識
2.11 実機録音時の注意点（距離、雑音、環境音）
実際に録音機器やマイクを使って現場録音を行う際には、機材の選び方だけでなく、録音時の「距離」「雑音」「環境音」への配慮が音質の良し悪しを大きく左右する。ここでは、音をより鮮明に記録し、不必要なノイズを抑えるための具体的な注意点とコツを、現場実例や専門家の知見に基づき細かく解説する。
まず「距離」の重要性を整理する。マイクと録音対象（話者や機械音など）の距離が適切でなければ、周囲の環境音が目立ったり、声や信号がぼやけてしまうことが多い。マイクは口元に近づけるほど（一般的には15〜20cm程度が標準的な指針）、周囲の雑音や反響音を抑えやすい。逆に30cm以上離すと、環境音が混じりやすく音質が損なわれやすい。さらに1m以上離すと部屋に跳ね返った音や周囲の声・騒音が大きく入るため、録音対象が明確な場合はなるべくマイクを近づけ、適切な距離を維持するのが基本になる。[1][2][3]
距離を調整する際には、マイクの指向性（どの方向の音をよく拾うか）も重要になる。単一指向性（カーディオイド）マイクは前方中心の音を集中的に拾い、横方向や背面のノイズを抑制する効果がある。最適な向きと距離を保ち、録音対象にマイクを向けることで不要な音を減らせる。[4][3]
「雑音」への対策は大きく物理的・機材的・環境的な方法に分かれる。まず物理的対策としては、マイクの周りにウインドスクリーンやポップガードなどを設置することで、風や息によるノイズ（ポップノイズ、風切音）を抑えられる。さらに、机や床からの振動はマイクに直接伝わって大きな雑音になるため、ハンカチや布をマイクの下に敷く、ショックマウントを使用するなどの工夫も有効である。[5][6][7][8][9]
機材由来の雑音として、パソコンや家電のファンの音は意外と集音されることが多い。録音機（PCMレコーダーなど）はPCから離して設置し、不要な電源につながっている機器は録音時にできるだけ電源を切る、もしくは距離をとるのが常識である。録音時は、機材ノイズの影響を受けにくい環境を作ることを意識して、静かな部屋を選ぶのが望ましい。[10][11][12][9][5]
さらに「録音環境音」への配慮としては、エアコンや換気扇、道路の騒音など定常的な環境音を記録に含めてしまわない工夫が求められる。具体的には、静かな部屋、交通量の少ない時間帯を選ぶ、エアコンや換気扇を録音時だけ切る、周囲への声かけで余計な話し声や足音を控えてもらう、衣類やアクセサリーの擦れる音を避けるなど、事前対策が非常に効果的である。[6][9]
録音時の「感度設定」や「ゲイン調整」も雑音を抑える上で不可欠となる。感度やゲイン（入力レベル）が高すぎると、周囲の雑音まで強調されてしまう。逆に低すぎると目的の音が弱く聞こえる。マイクを近づけることでゲインを抑えられ、声や信号がクリアに録音できる。目安としては、最大音量が-6dBから-12dBの範囲（必要に応じて大声でも-3dBを超えない）になるように調整し、音割れや歪みが起きないようにする。ピークメーターで視覚的にチェックしつつ、モニターヘッドホンで耳でもノイズの有無を確かめる習慣が大切である。[13][14][2][12]
事後処理としてイコライザー（EQ）やノイズ除去プラグインを使う方法もあるが、ノイズを後から全部消すことは難しく、不自然な音になることも多い。まず録音時点で根本的にノイズ対策を徹底し、編集は補助的な役割と考えるのが理想的である.[11][12][10][6]
また、録音者自身が発するノイズ（ハンドリングノイズ、服の擦れる音、呼吸音など）にも配慮する必要がある。マイクを持つ手をしっかり安定させ、衣服の摩擦音を防ぐため衣類やアクセサリーはシンプルなものを選び、録音前に口元の水分補給やポップガードの活用も効果的である.[8][6]
まとめとして、実際の現場で高品質な録音をするためには、
- マイクを記録対象に近づける（15〜20cm前後が目安）、距離が出すぎると環境音が混ざりやすい
- 周囲の環境音（空調、パソコン、外の音）を徹底的に排除する工夫をする
- 指向性マイクやウインドスクリーン、ポップガードなどノイズ対策用の機材を活用する
- ゲインや録音レベルを適切に調整し、音割れとノイズ増加を防止する
- 机や床からの振動、手持ちによるノイズにも注意し、できるだけ安定した設置や録音姿勢を心がける
- 収録中はヘッドホンでリアルタイムにノイズや環境音をチェックする[14][2][3][9][10][5][1][4][6][8]
録音現場での一手一手が、音データの品質や分析の正確さに直結する。事前の準備と録音環境の最適化、機材と設定の細やかな配慮が、高精度の音データ取得には不可欠である。
[1] https://kotarohattori.com/how-to-record-voice/ [2] https://lowpass.studio/recommend-pcm-recorder/ [3] https://www.powblo.com/tips/mic/usb-mic-how-to-gain [4] https://sloppy-games.com/microphone-settings-to-not-pick-up-surrounding-sounds/ [5] https://withteam.jp/mojiokoshi/blog/recording/ [6] https://anagrams.jp/blog/video-noise-reduction-and-audio-editing-techniques/ [7] https://note.com/oddeyelabo/n/n34b0169ab97d [8] https://www.audio-technica.co.jp/always-listening/articles/field-recording-03/ [9] https://chapro.jp/account/32299/article/2543 [10] https://note.com/studio_0x/n/nacb8bf6f0017 [11] https://app-liv.jp/articles/143532/ [12] https://castcraft.live/blog/168/ [13] http://codama.co.jp/pcmr/archives/134 [14] https://shuffle.genkosha.com/products/dslr/otodori/9317.html [15] https://note.com/kasafala_jp/n/n777458df564e [16] https://very-q.jp/labo/1701/ [17] https://note.com/push_it_studio/n/n79a5fff415b8 [18] https://acp.amivoice.com/blog/souon02_2406/ [19] https://digishoku.co.jp/blog/tips/2432/ [20] https://www.sony.jp/feature/products/190117/※本ページは、AIの活用や研究に関連する原理・機器・デバイスについて学ぶために、個人的に整理・記述しているものです。内容には誤りや見落としが含まれている可能性もありますので、もしお気づきの点やご助言等ございましたら、ご連絡いただけますと幸いです。
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