
2. 音データの基礎知識
2.10 録音機器とマイクの種類
録音に使う道具は大きく分けて「音を電気信号に変えるマイク」と、「その信号を記録する録音機」に分かれる。最初に全体像をやさしく押さえ、その後で代表的なマイクの方式(どうやって音を電気に変えるか)、指向性(どの方向の音をよく拾うか)、録音機(ICレコーダーとPCMレコーダーなど)の違いを整理する。
マイクの方式は主に三つが広く使われている。ダイナミック型は丈夫で電源が不要、感度は控えめだが扱いやすいという性格を持つと解説される。コンデンサー型は電源(ファンタム電源など)が必要だが感度が高く、細かな音のニュアンスまで拾いやすいとされる。リボン型は構造上はダイナミックの一種で、薄い金属リボンで繊細な音色を得るタイプとして説明されることが多い。概要として、現場での頑丈さと手軽さならダイナミック、静かな環境での高品位収音ならコンデンサー、音色重視のスタジオワークにリボン、と覚えると実務に沿う。[1][2][3][4]
もう少し仕組みに触れると、ダイナミック型は磁石とコイルの相互作用で電気を生む「動電型」の原理を使い、空気の振動で膜に付いたコイルが動いて信号が出る。一方、コンデンサー型は二枚の金属板の距離変化を電気の変化として取り出すため外部電源が必要になる、というのが基本的な違いである。この電源はレコーダーやミキサーからのファンタム電源として供給されるのが一般的だ。[4][5]
マイクには「どの方向の音をどれだけ拾うか」を表す指向性がある。全方向を均等に拾う無指向性、正面方向に強い単一指向性(カーディオイド)、前後を拾う双指向性(フィギュア8)が基本で、単一指向性にはさらに狭い範囲を狙えるスーパーカーディオイドやハイパーカーディオイドの派生がある。無指向性は会議など複数方向の音を漏れなく拾いたいときに便利だが、環境音も多く含みやすい。単一指向性は狙った音を中心に拾い、周囲の雑音を相対的に抑えやすいのでボーカルや楽器、講義などでよく使われる。双指向性は向かい合う二人の対談などに向き、正面と背面を強く拾う特性を持つ。また、単一指向性はマイクを音源に近づけると低音が膨らむ「近接効果」が出やすいので、距離や低域の調整に注意する。[6][7][8][9]
録音機については、用途と音質で大きく二つを知っておくとよい。ICレコーダーはメモ用途向けで、圧縮形式で手軽に長時間記録することが多く、コストと簡便さが強みである。一方、リニアPCMレコーダーは非圧縮のPCMで高音質に記録でき、サンプリング周波数やビット深度も高設定に対応しやすいのが特徴で、プロや半プロの現場でも広く使われる。PCMは圧縮しないので元の音に近い形で残せ、編集や解析の自由度が高い点が強調される。動画制作やフィールドレコーディングの解説でも、PCMレコーダーは外部マイク接続や細かな設定に対応し、非圧縮WAVで保存するなど互換性の高さが利点として挙げられている。[10][11][12][13]
実際の選び方を場面別にまとめると、騒がしい場所で丈夫さとハウリング耐性が必要なライブ・現場記録ならダイナミック+単一指向性が扱いやすい。静かな部屋で声や楽器の繊細さまで取りたい収録ならコンデンサー(必要に応じて大口径・小口径を選択)+適切な指向性が有利だ。二者対談や向かい合う配置なら双指向性一本で二人を拾う手もある。会議室全体や環境音の収録では無指向性、もしくはステレオ対応のハンディPCMレコーダー(XYやAB配置内蔵マイク)を用いることが多い。高音質保存や後での編集・解析を前提にする場合は、記録機としてリニアPCMレコーダーを選ぶのが堅実である。[3][11][8][12][1][4][6][10]
注意点として、コンデンサーマイクは電源が必要で、湿気や衝撃に弱いので取り扱いに配慮が要る。また、指向性の選択を誤ると、狙い以外の音(空調やスピーカー音)が多く入り、聞き取りづらくなる。単一指向性にもカバー角の違い(カーディオイド、スーパーカーディオイド、ハイパーカーディオイド)があり、背面からの音の入り方も差が出るため、スピーカー配置や騒音源の位置を踏まえて選ぶ。さらに、マイクの指向性は「どの方向をどれだけ拾いたいか」を決める基本で、最低限、無指向・単一指向・双指向の違いを把握しておくと実地で迷いが減る。[7][8][1][4][6]
収録品質を左右する小技も押さえておきたい。ポップノイズ(破裂音)対策にポップガード、風のある屋外ではウインドジャマーを使う。機材ノイズや床振動の伝達を抑えるためにショックマウントを併用する。マイクと口の距離は安定させ、単一指向性では正面(軸上)を基本に、近接効果が強いときは少しオフ軸にするなどの工夫が効く。PCMレコーダーでは録音フォーマットを非圧縮WAVにし、サンプリング周波数やビット深度を目的に合わせて設定すると、後処理や解析の自由度が高まる。[11][6][10]
最後に、導入時の優先順位を簡潔に。狙いの音源と周囲の騒音の関係から指向性を選ぶ(無指向・単一指向・双指向)。用途と環境から方式を選ぶ(頑丈で電源不要のダイナミック、繊細高感度のコンデンサー、音色重視のリボン)。記録は可能ならリニアPCM(非圧縮)で行い、後工程を見越した設定と外部マイク接続の可否を確認する。この三点を押さえれば、授業の記録から機械音の収集まで、目的に合った機材選択ができる。[2][8][12][1][3][6][10][11] [1] https://www.shimamura.co.jp/shop/nagoya/product/20230427/8263
[2] https://www.soundhouse.co.jp/contents/column/index?post=1831 [3] https://wavesjapan.jp/articles/vocalmixathome1 [4] https://blog.onlive.studio/basic-knowledge-of-microphone-24 [5] https://www.audio-technica.co.jp/microphone/navi/whatis/01-01.php [6] https://www.fullten.jp/blog/contents/microphone-directionality/ [7] https://masafumiiwasaki.com/blog/microphone-polar-pattern/ [8] https://www.shure.com/ja-jp/insights/multi-pattern-microphones-what-where-and-how/ [9] https://www.audio-technica.co.jp/microphone/navi/whatis/02-02.php [10] https://lowpass.studio/pcm-recorder-zoom-h1essential/ [11] https://lowpass.studio/recommend-pcm-recorder/ [12] https://eisukeyanagisawa.com/essay/equipment1/ [13] https://note.com/keita_cl/n/n471cf3998634 [14] https://masafumiiwasaki.com/blog/mic-3types/ [15] https://himaraji.com/manual/index.php?%E9%9F%B3%E3%81%A8%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%82%AA%E7%94%A8%E9%9F%B3%E9%9F%BF%E6%A9%9F%E6%9D%90%2F%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E7%9F%A5%E8%AD%98%E3%81%A8%E9%81%B8%E3%81%B3%E6%96%B9 [16] https://www.fullten.jp/blog/contents/condenser-microphone/ [17] https://jp.pronews.com/column/20130702173012347.html [18] https://www.borderless-tokyo.co.jp/borderlessseminar/chisiki/shooting/sc014.html [19] https://styro.hatenablog.com/entry/2024/11/01/110027 [20] https://www.watanabe-mi.com/shopping/list/c351/?page=1※本ページは、AIの活用や研究に関連する原理・機器・デバイスについて学ぶために、個人的に整理・記述しているものです。内容には誤りや見落としが含まれている可能性もありますので、もしお気づきの点やご助言等ございましたら、ご連絡いただけますと幸いです。
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