
このレポートでは、社会の様々な分野で使用されているモーターについて、基本的な概念から実用的な知識まで包括的に調査した結果をまとめています。初心者にも理解できるよう、専門用語の説明と具体例を多く含め、技術的な正確さと読みやすさの両立を目指しました。
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1. 歴史
モーターの歴史は19世紀初頭にさかのぼります。電気と磁気の関係が解明されていく過程で、動力源としてのモーターも次第に発展していきました。
1.1 初期の発見と開発
1821年、イギリスの科学者マイケル・ファラデーがモーターと発電機の原理を発見しました。ただし、彼自身はその発見の重要性に気づいていなかったとされています19。その後、1827年にハンガリーのイェドリク・アーニョシュが回転する装置を製作し、発電機の概念も確立しました19。
1831年、ファラデーは「電磁誘導の法則」を発見し、単極発電機を開発しました。この発見がモーターと発電機の理論的基礎となりました1920。翌1832年には、フランスのヒポライト・ピクシーが最初の交流発電機を製作しています19。
1.2 実用化への道
1834年、アメリカのトーマス・ダウェンポートが実用的な直流モーターを製作しました(世界初の製作者については諸説あります)19。その後、1866年にドイツのヴェルナー・フォン・ジーメンス(現在の大企業シーメンスの創始者)が自励式自動発電機を発明しました19。
1873年には、ベルギーのゼノブ・グラムが実用発電機を開発しました。興味深いことに、この頃のウィーン万博でケーブル接続を間違えた結果、停止中の発電機が回転し始めるという事故が起き、発電機を逆に回すとモーターになることが発見されました19。
1.3 近代モーターへの進化
1888年、アメリカのニコラ・テスラが交流モーターを発明しました19。テスラの名前は現在の電気自動車メーカーのテスラ社の社名の由来にもなっています。この発明以降、モーターの実用化が加速し、様々な産業分野で活用されるようになりました。
産業革命の時代、新しい発明は特許により大きな利益をもたらしたため、多くの研究者が競い合いました。エジソンの電球やグラハム・ベルの電話のように、モーターの発展も発明者たちの競争によって推進されてきたのです19。
2. 種類
モーターにはさまざまな種類があり、使用する電源や構造によって分類されます。ここでは代表的なモーターの種類とそれぞれの特徴について説明します。
2.1 電源による分類
モーターは電源の種類に着目すれば、大きくDCモーター(Direct Current:直流モーター)とACモーター(Alternating Current:交流モーター)に分類できます2。
2.1.1 DCモーター(直流モーター)
DCモーターは、直流電源で動作するモーターの総称です。電池やDC電源アダプターなどの直流電源で駆動される点が特徴です。DCモーターにはさらに以下のようなタイプがあります2:
- ブラシ付きモーター:
- ブラシレスモーター:
名前の通りブラシを持たないDCモーターで、インバータ回路によって回転を制御します。構造によって以下の3つに分類されます2:
- インナーローター型:小型でも高出力を持ち、応答性と制御性に優れています。
- アウターローター型:高トルクで薄型化が可能ですが、振動や騒音が発生しやすい特性があります。
- ディスクローター型:HDDやブルーレイドライブなどに使用され、薄型で安定した回転を実現します。
- インナーローター型:小型でも高出力を持ち、応答性と制御性に優れています。
- ステッピングモーター:
一定の角度(ステップ)で回転するモーターで、パルス信号によって制御します。時計の針のような動きが特徴です2。
- PM型(永久磁石型):高トルクで安価ですが、細かい分解能を持たせることが困難です。
- HB型(ハイブリッド型):PM型とリラクタンス型の特性を組み合わせたタイプです。
- PM型(永久磁石型):高トルクで安価ですが、細かい分解能を持たせることが困難です。
2.1.2 ACモーター(交流モーター)
ACモーターは家庭用コンセントなどの交流電源で動作するモーターです。主に以下の2種類があります212:
- 誘導モーター:
非同期式で、交流電源に直接接続して使用できる比較的安価なモーターです12。家電製品や工場設備など、幅広い分野で使用されています。 - 同期モーター:
回転子の回転速度が電源周波数と一致(同期)するモーターです。高精度な回転速度の制御が必要な用途に適しています。
2.2 その他の分類
上記の基本的な分類以外にも、特定の特性や用途に基づいたモーターの分類があります12:
- PMモーター(永久磁石式モーター):
回転子に永久磁石を使用したモーターで、小型化しやすい特徴があります。 - ステッピングモーター(パルスモーター):
パルス信号との同期で動作し、パルス信号の周波数を高めると回転速度が速くなります。
各種モーターはそれぞれ特有の長所と短所を持っており、用途や必要な性能に応じて選択する必要があります。例えば、精密な位置決めが必要な場合はステッピングモーター、高速回転が必要な場合はブラシレスモーターというように、適材適所で使い分けることが重要です。
3. 原理
モーターの動作原理を理解することは、適切な選択と使用方法の基礎となります。ここでは、モーターが回転する基本的な仕組みを説明します。
3.1 電磁気の基本原理
モーターが回転するためには、永久磁石と電磁石の力を利用します3。この原理は、同じ磁極同士は反発し、異なる磁極同士は引き合うという磁気の基本法則に基づいています。
具体的には、モーターの基本構造として、両端に永久磁石(N極とS極)を配置し、その間に回転軸のある電磁石を置きます3。電磁石は電流が流れると磁石の性質を持ちますが、電流の向きによってN極とS極が決まるという特性があります。
3.2 回転の仕組み
モーターが回転する基本的なメカニズムは以下の通りです15:
- コイル(電磁石)に電流を流すと、磁界が発生します。
- この磁界が永久磁石と相互作用します。同じ極同士は反発し、異なる極同士は引き合います。
- この力によってコイルが回転します。
- しかし、このままでは一定角度回転した後に安定状態になり、回転が止まってしまいます。
3.3 継続的な回転の仕組み
継続的な回転を実現するために、モーターのタイプによって異なる方法が用いられます:
3.3.1 ブラシ付きDCモーターの場合
ブラシ付きDCモーターでは、「整流子(コミテーター)」と「ブラシ」と呼ばれる部品が重要な役割を果たします12:
- 整流子はコイルの両端と接続しており、回転によって電流の向きを自動的に切り替えます。
- ブラシは整流子と接触する電極で、電源からの電流を整流子に伝えます。
- 整流子とブラシの組み合わせにより、コイルが半回転するごとに電流の向きが切り替わります。
- これにより、コイルの磁極が常に適切に切り替わり、永久磁石との間で常に回転力(トルク)が発生し続けます。
例えば、コイルが回転して90度の位置に達すると、整流子はブラシから離れます。このとき電流は流れず電磁力は失われますが、それまでの勢い(慣性)で回転が続きます。そして整流子が再びブラシに接触すると電流が流れ、さらに回転力が発生します12。
3.3.2 ブラシレスDCモーターの場合
ブラシレスDCモーターでは、整流子とブラシの代わりに電子回路によって電流の向きを制御します12:
- 電子回路(インバータ回路)が、磁石の位置を検出センサーからの信号に基づいて、コイルに流す電流のタイミングと向きを制御します。
- これにより、機械的な接触部品なしで効率的な回転を実現します。
このように、モーターの基本原理は電磁気学の法則に基づいていますが、継続的な回転を実現するための具体的な方法は、モーターの種類によって異なります。これらの原理の理解は、モーターのトラブルシューティングや最適な使用方法を考える上で非常に重要です。
4. 構造
モーターの基本構造を理解することは、その性能や特性を把握する上で重要です。ここでは、一般的なモーターの構造と主要部品について説明します。
4.1 基本構成要素
モーターの主要な構成要素は、大きく分けて以下の5つです4:
- ロータ(回転子):
モーターの回転する部分です。英語では「rotor」と呼ばれます。動力を発生する中心的な部品です。 - ベアリング(軸受):
ロータの回転軸(シャフト)を支持する部品です。スムーズな回転と軸の位置決めを担当します。 - ステータ(固定子):
ロータを回転させるための力を発生させる固定された部分です。英語では「stator」と呼ばれます。 - ブラケット(エンドプレート):
ベアリングを支持し、ステータと一体になっている部品です。モーターの両端に位置し、内部部品を保護する役割も果たします。 - リード線:
モーターへ電力を供給するための電線です。駆動回路や電源に接続されます。
4.2 ステータの構造
ステータには典型的な構造として、以下の4種類があります4:
- 分布巻ステータ:
コイルが広く分布して巻かれているタイプです。トルクの変動が少なく滑らかな回転が特徴です。 - 集中巻ステータ:
特定の箇所に集中してコイルが巻かれているタイプです。製造が比較的容易で低コストという利点があります。 - 誘導子型ステータ:
磁束の方向を誘導するための特殊な構造を持つステータです。 - 永久磁石型ステータ:
コイルの代わりに永久磁石を用いたステータです。シンプルな構造が特徴です。
4.3 ロータの構造
ロータは10種類に分類できますが、代表的なものとして以下があります4:
- かご型ロータ:
導体棒とエンドリングがかごのような形状をしているロータです。誘導モーターでよく使用されます。 - 永久磁石型ロータ:
永久磁石を使用したロータで、高効率なモーターに使用されます。 - 整流子型ロータ:
ブラシ付きDCモーターで使用される、整流子を備えたロータです。
4.4 ブラシ付きDCモーターの詳細構造
特にブラシ付きDCモーターの場合、以下の構造的特徴があります12:
- ローター(回転子):
モーターの回転する部分で、コイルが巻かれています。 - コイル(巻線):
ローターの外周に取り付けられた電線(導線)です。銅やアルミニウムなどの材料で作られています。 - ステーター(固定子):
ローターを囲む外側の固定部分です。永久磁石が組み込まれています。 - 永久磁石:
N極とS極が対面するように設置され、コイルに働く磁力の源となります。 - 整流子(コミテーター):
コイルの両端と接続し、回転中に電流の向きを変える部品です。 - ブラシ:
整流子と接触する電極で、電源からの電流を供給します。回転中に接触・非接触を繰り返します。
日常生活で例えると、電動歯ブラシや電動おもちゃなどに使われている小型のモーターは、多くの場合このブラシ付きDCモーターの構造を持っています。
4.5 モーターの構成材料
モーターを構成する主要素材には以下のようなものがあります4:
- 電線(導線):
電流の通路となる部品で、主に銅が使用されます。まれにアルミニウムが使われることもあります。 - 鉄心:
磁束の通路となる部品で、材料は鉄(特に珪素鋼)が使用されます。 - 絶縁材:
電流が所定の場所以外に流れないようにする材料で、高分子化合物・樹脂、紙、マイカ、ガラス繊維などが使用されます。 - 永久磁石:
磁界の発生源となる部品で、鉄を主成分とする合金あるいは酸化物が使用されます。
これらの構造と材料の組み合わせにより、様々な特性を持つモーターが実現されています。例えば、高性能な永久磁石と精密な電子制御を組み合わせることで、小型でありながら高いトルクを発生する高効率モーターが製造可能になっています。
5. 出力
モーターの出力は、その性能を評価する上で最も重要な指標の一つです。ここでは、モーターの出力に関する基本的な概念と、それに関連する要素について説明します。
5.1 モーターの出力とは
モーターの出力とは、モーターが単位時間あたりに外部に提供できる機械的なエネルギーの量を指します。一般的にワット(W)またはキロワット(kW)で表されます5。
出力は、モーターの回転力(トルク)と回転速度から計算することができます。具体的には、トルクと角速度の積として表されます5。
簡単に言えば、出力はモーターが「どれだけの力」で「どれだけ速く」回転できるかを示す指標です。例えば、同じ10Wの出力でも、高トルク・低速回転のモーターと、低トルク・高速回転のモーターでは、用途によって使い分ける必要があります。
5.2 トルクとは
トルクとは、回転軸周りの力のモーメントのことを指し、モーターの回転力を表します7。単位はニュートン・メートル(N・m)です。
例えば、レンチでナットを回す場合、レンチの長さが長いほど少ない力でナットを回せますが、これはトルク(力×距離)が大きくなるためです。同様に、モーターのトルクが大きいほど、より大きな負荷を回転させることができます。
身近な例では、自転車の坂道走行を考えると分かりやすいでしょう。急な坂道を上るには、ギアを低速側に切り替えてペダルを強く踏む(高トルク・低速回転)必要があります。一方、平坦な道ではギアを高速側にして、軽い力で速くこぐ(低トルク・高速回転)ほうが効率的です。
5.3 回転数との関係
モーターの回転数は、1分間当たりの回転数を表し、回転毎分(r/min)または毎分回転数(RPM)という単位で表されます7。
出力は、トルクと回転数の積に比例します。つまり、同じトルクでも回転数が高ければ出力は大きくなります5。
例えば、モーターに負荷がかかっていない状態での回転数を「無負荷回転数」と呼びます。負荷が増加するとトルクは上昇しますが、回転数は低下します。最終的に、モーターが停止する直前のトルクを「停動トルク(stall torque)」と呼びます7。
5.4 モーター性能線図
モーターの性能は、「モーター性能線図」によって視覚的に表現されます。これは横軸にトルク、縦軸に回転数、電流、出力、効率などをプロットしたグラフです7。
この性能線図からは以下のような情報を読み取ることができます:
- トルクと回転数の関係:
トルクが増加すると回転数は直線的に減少します。 - トルクと電流の関係:
トルクが増加すると電流も比例して増加します。 - トルクと出力の関係:
出力はトルクに対して放物線を描き、最大出力となる最適なトルク値が存在します。 - トルクと効率の関係:
効率もトルクに対して山型のカーブを描き、最も効率が高くなるトルク値が存在します。
実際の使用場面では、例えば電動工具を考えてみましょう。ドリルで硬い材料に穴を開ける場合、高いトルクが必要ですが、回転数はそれほど重要ではありません。一方、サンダーやグラインダーでは、高速回転が必要ですが、トルクはそれほど重要ではありません。このように、用途に応じて最適なトルクと回転数のバランスを持つモーターを選ぶことが重要です。
6. 利用用途・利用分野
モーターは私たちの日常生活から産業分野まで、様々な場面で活用されています。ここでは、モーターの主な利用用途と分野について詳しく見ていきます。
6.1 日常生活での利用
私たちの身の回りには、驚くほど多くのモーターが使用されています6。
6.1.1 家電製品
家庭内の多くの電化製品にモーターが組み込まれています:
- 洗濯機:
洗濯槽を回転させるためのモーターが使用されています。最近の高効率なドラム式洗濯機では、インバータ制御のブラシレスモーターが採用されることが増えています。 - 冷蔵庫:
コンプレッサーを駆動するモーターが内蔵されています。また、自動製氷機や冷気循環ファンにもモーターが使用されています。 - オーディオ機器:
CDやDVDを回転させるディスク駆動部にモーターが使用されています。特に安定した回転が求められるため、高精度なモーター制御が行われています6。 - 掃除機:
吸引力を生み出すファンを回転させるために強力なモーターが使用されています。コードレス掃除機では、軽量かつ高出力のモーターが特に重要です。
6.1.2 電子機器
- 自動販売機:
紙幣や硬貨の処理機構、商品を取り出して搬送する機構など、複数のモーターが使用されています6。 - プリンター:
用紙の給紙・搬送、インクヘッドの移動など、様々な部分にモーターが使用されています。特に高精度な位置決めが必要なため、ステッピングモーターが多く採用されています6。 - ハードディスクドライブ:
データを記録するディスクを高速回転させるために、精密なモーターが使用されています。高速かつ安定した回転が求められます。
6.1.3 乗り物
- 自動車:
現代の自動車には数十個ものモーターが搭載されています。ヘッドライト、ドアミラー、パワーウィンドウ、パワーシート、パーキングブレーキなど、様々な電装部品にモーターが使用されています6。特に電気自動車やハイブリッド車では、車輪を直接駆動する大型のモーターも搭載されています2。 - 鉄道:
電車の走行にはモーターが不可欠です。特に電車では、架線からの電力を利用して車輪を回転させる大型のモーターが使用されています。 - 電動自転車・電動スクーター:
アシスト力を生み出すために、高効率な小型モーターが使用されています。例えば、GOGORO INCのような電動機車メーカーは、高性能な電動モーターを採用しています1。
6.2 産業分野での利用
産業分野では、より専門的かつ高性能なモーターが様々な場面で活用されています6。
6.2.1 FA(ファクトリーオートメーション)分野
工場の自動化を実現するための様々な機器にモーターが使用されています:
- 工場用ロボット:
関節の動きや工具の操作など、複数のモーターが協調して動作することで複雑な作業を実現しています。 - ベルトコンベア:
製品や部品を運ぶベルトコンベアの駆動部に、安定した速度と十分なトルクを持つモーターが使用されています6。 - 工作機械:
旋盤やフライス盤などの工作機械では、工具や材料を精密に動かすために高トルク・高精度なモーターが使用されています。
6.2.2 医療機器
静かな環境が求められる医療現場では、特に静音性の高いモーターが重要です6:
- 透析装置:
血液ポンプを駆動するためのモーターが使用されています。安全性と信頼性が特に重視されます。 - CTスキャナ:
高速回転するX線管とディテクタの駆動、および冷却装置にモーターが使用されています6。 - 手術用機器:
電動メスや内視鏡などの医療機器にも小型で精密なモーターが使用されています。
6.2.3 無人搬送システム
- AGV(無人搬送車):
工場や倉庫で重量物を運搬するAGVの駆動部に、高トルクで信頼性の高いモーターが使用されています6。 - AMR(自律移動ロボット):
自律的に移動するロボットの駆動部に、小型かつ高効率なモーターが採用されています。例えば、マブチモーターの「MSシリーズ」は、その小型さにより車両の高さを抑え、バッテリー用のスペースを確保しやすいという利点があります6。
このように、モーターは私たちの生活や産業活動に欠かせない存在となっています。技術の進歩とともに、より小型・高効率・高性能なモーターが開発され、その用途はさらに広がっていくと考えられます。
7. 仕様・性能
モーターを選択する際には、その仕様や性能を正確に理解することが重要です。ここでは、モーターの主要な性能指標とその意味について説明します。
7.1 基本的な性能指標
モーターの性能を表す基本的な指標には、以下のようなものがあります713:
7.1.1 回転数(N)
回転数は、1分間当たりの回転数を表し、r/min(revolutions per minute)という単位で表されます13。同じ出力のモーターでも、回転数の違いにより用途が異なります。高速回転が必要な用途(例:ファン、タービン)では高回転型のモーターが適しています。
主な回転数の指標には以下のものがあります:
- 無負荷回転数:
モーターに負荷がかかっていない状態での回転数です。カタログなどでは、この値が基準となることが多いです7。 - 定格回転数:
定格出力を発生させている状態での回転数です。実用的な運転状態の目安となります。
7.1.2 トルク(T)
トルクは、回転軸周りの力のモーメントを表し、N・m(ニュートン・メートル)という単位で表されます7。トルクが大きいほど、より大きな負荷を回転させることができます。
主なトルクの指標には以下のものがあります:
- 停動トルク(Stall Torque):
モーターの回転が停止するほどの負荷をかけた時に発生するトルクです。これはモーターが発生できる最大のトルクを示しています7。 - 定格トルク:
モーターが連続的に出力できる標準的なトルクです。この値を超える負荷で長時間運転すると、モーターに負担がかかり寿命が短くなる可能性があります。 - 始動トルク:
モーターが静止状態から回転を始める際に発生するトルクです。重い負荷を動かす用途では、高い始動トルクが重要になります。
7.1.3 電流(I)
電流は、モーターに流れる電気の量を表し、A(アンペア)という単位で表されます7。
主な電流の指標には以下のものがあります:
- 無負荷電流:
モーターに負荷がかかっていない状態で電圧を印加したときに流れる電流です7。 - 停動電流(Stall Current):
モーターの回転が停止するほどの負荷をかけた時に流れる電流です。これはモーターが消費する最大の電流を示しています7。 - 定格電流:
定格出力を発生させている状態での電流値です。電源や駆動回路の設計において重要な指標となります。
7.1.4 出力(P)
出力は、モーターが発生する機械的パワーを表し、W(ワット)という単位で表されます7。出力はトルクと角速度の積で計算されます。
例えば、0.1 N・mのトルクで2000 r/minで回転している場合、出力は約21 Wとなります7。
7.1.5 効率(η)
効率は、モーターに加えた電気エネルギーのうち、何%が機械エネルギーとして有効に利用できたかを示す指標です13。パーセント(%)で表されます。
効率は以下の式で計算されます:
効率η[%] = 出力[W] ÷ (電圧[V] × 電流[A]) × 100
例えば、0.1 N・mのトルク時、出力21 W、電圧24 V、電流1.2 Aの場合、効率は約73%となります7。
7.2 性能に影響を与える要素
モーターの性能には、以下のような要素が影響を与えます7:
7.2.1 電源電圧
電源電圧の変化は、モーターの性能に直接影響します。電圧が上がると、無負荷回転数やストール電流、ストールトルクも比例して増加します7。
例えば、電圧が12 Vから24 Vに上がると、回転数も約2倍になります。これは、家庭用の扇風機などで、「強」「中」「弱」のスイッチを切り替えると回転数が変わる原理と同じです。
7.2.2 巻数と巻線径
コイルの巻数や巻線の太さの変化も、モーターの性能に影響します:
7.2.3 磁石の種類
モーターに使用される磁石の磁力の強さも性能に影響します。一般的に、磁力が強いほどトルクが大きくなりますが、無負荷回転数は低下します7。
例えば、フェライト磁石から希土類磁石(ネオジム磁石など)に変更すると、トルクは大幅に向上しますが、コストも上昇します。
これらの性能指標は相互に関連しており、一つを向上させると別の指標が低下することもあります。そのため、用途に合わせてバランスの良いモーターを選定することが重要です。例えば、高速回転が必要な冷却ファンでは高回転・低トルク型、重い物を持ち上げるリフトでは低回転・高トルク型のモーターが適しています。
8. 選定方法
適切なモーターを選定することは、機器やシステムの性能、信頼性、経済性に大きな影響を与えます。ここでは、目的に合ったモーターを選ぶための手順と考慮点について説明します。
8.1 選定の基本手順
モーター選定の基本的な手順は以下の通りです8:
8.1.1 駆動機構の決定
まず最初に、どのような機構でモーターのパワーを伝達するかを決定します。代表的な駆動機構には以下のようなものがあります8:
- 単純な回転体:
モーターの回転をそのまま利用する方式です。ファンやポンプなどが該当します。 - ボールねじ:
回転運動を直線運動に変換する機構です。工作機械や自動ドアなどに使用されます。 - ベルトプーリ:
ベルトとプーリ(滑車)を使って回転を伝達する機構です。減速や増速が可能で、騒音や振動を抑える効果もあります。プリンターやコンベアなどに使用されます。 - ラック・ピニオン:
歯車(ピニオン)と歯付きの直線部材(ラック)を組み合わせ、回転運動を直線運動に変換する機構です。工作機械や自動ドアなどに使用されます。
各機構の特性に合わせて、負荷計算に必要な寸法、質量、摩擦係数などを決定します8。
8.1.2 要求仕様の確認
次に、装置の仕様からモーターへの要求仕様を確認します。主な確認項目は以下の通りです8:
- 運転速度および運転時間:
どのくらいの速度で、どのくらいの時間運転するかを確認します。連続運転なのか、断続運転なのかも重要です。 - 位置決め距離と時間:
精密な位置決めが必要な場合、その距離と所要時間を確認します。 - 分解能:
位置決めの最小単位を確認します。高精度な位置決めが必要な場合は特に重要です。 - 停止精度:
目標位置での停止精度の要求を確認します。 - 位置の保持:
位置を保持する必要があるかどうかを確認します。保持が必要な場合、ブレーキ機構やセルフロック機構が必要になることがあります。 - 電源電圧および周波数:
利用可能な電源条件を確認します。 - 使用環境:
温度、湿度、振動、粉塵などの環境条件を確認します。特殊環境での使用には適合するモーターを選定する必要があります。
8.1.3 負荷計算
駆動機構と要求仕様をもとに、モーターにかかる負荷を計算します。主な計算項目には、慣性モーメント、必要トルク、加速・減速時間などがあります。
例えば、垂直方向に物体を持ち上げる場合、重力による負荷(重量×重力加速度)と加速時の負荷(質量×加速度)、および機械的な摩擦を考慮する必要があります。
8.1.4 モーター機種の選択
負荷計算の結果に基づいて、適切なモーター機種を選択します。考慮すべき主な要素は以下の通りです:
- モーターのタイプ:
用途に応じてDCモーター、ACモーター、ステッピングモーター、サーボモーターなど適切なタイプを選択します。 - 出力と定格:
計算した必要トルクと速度を満たす出力と定格を持つモーターを選びます。安全率を考慮して、必要値より余裕を持たせることが一般的です。 - サイズと重量:
装置の設計制約内に収まるサイズと重量のモーターを選びます。 - 効率とコスト:
運転効率とコストのバランスを考慮します。初期コストだけでなく、運転コストや保守コストも重要です。
8.2 選定のポイント
実際のモーター選定では、以下のようなポイントに注意すると良いでしょう:
8.2.1 安全率の考慮
計算で得られた必要トルクや出力に対して、一定の安全率(余裕)を持たせることが重要です。一般的には、1.2~1.5倍程度の安全率が用いられます。
例えば、計算上で10 N・mのトルクが必要な場合、安全率1.3を考慮すると、13 N・m以上のトルクを持つモーターを選定します。
8.2.2 使用率と熱特性の考慮
モーターは使用中に熱を発生します。連続運転と断続運転では適したモーターが異なります。使用率(デューティサイクル)と熱特性を考慮して選定することが重要です。
例えば、家庭用ミキサーのようにごく短時間の使用であれば、小型でも高出力のモーターが使えますが、工場のベルトコンベアのように長時間連続運転する場合は、熱対策が十分なモーターが必要です。
8.2.3 効率と電力消費
特に電池駆動や省エネルギーが重要な用途では、モーターの効率が重要な選定基準となります。高効率モーターは初期コストが高い場合でも、長期的には電力コストの削減につながります。
例えば、電動工具や電動自転車などでは、バッテリー寿命を延ばすために高効率なモーターが選ばれます。
8.3 選定サービスとツールの活用
モーター選定は複雑な計算を伴う場合が多いため、メーカーが提供する選定ツールやサービスを活用するのも効果的です8:
- モーター選定ツール:
多くのモーターメーカーはウェブ上で機構や運転条件の数値を入力するだけで適切な製品を選定できるツールを提供しています。 - 専門家によるサポート:
複雑な用途や特殊な要件がある場合は、メーカーの専門スタッフに選定を依頼することも可能です。
例えば、オリエンタルモーターでは、WEB上で7つの機構から全てのカテゴリのモーターを選定できるツールを提供しており、専任スタッフによる選定サービスも行っています8。
適切なモーター選定により、装置の性能向上、信頼性向上、コスト削減、エネルギー効率の向上などのメリットが得られます。例えば、省エネ性能の高い最新のモーターに置き換えることで、工場の電力消費を大幅に削減できた事例も多く報告されています。
9. 使い方
モーターを効果的に使用するためには、適切な使い方を理解することが重要です。ここでは、一般的なモーターの接続方法や制御方法、および効率的な運用のポイントについて説明します。
9.1 基本的な接続と駆動方法
モーターの基本的な接続方法は、モーターのタイプによって異なります10:
9.1.1 ブラシ付きDCモーターの場合
ブラシ付きDCモーターは、最もシンプルな接続で駆動できるモーターの一つです:
- 基本接続:
モーターの端子を電源に直接接続するだけで回転します。電源を切ると停止します10。 - 回転方向の制御:
端子への接続極性を逆にすると、回転方向が反転します。つまり、プラスとマイナスを入れ替えるだけで、時計回りと反時計回りの切り替えが可能です。 - 速度制御:
電源電圧を変えることで回転速度を制御できます。電圧が高いほど回転速度が上がります。家庭用の扇風機などで使われている「強・中・弱」の切り替えは、このような電圧制御の一例です。
9.1.2 ブラシレスDCモーターの場合
ブラシレスDCモーターは、専用のドライバー(コントローラー)が必要です:
- 接続:
モーターとドライバーを接続し、ドライバーに電源を供給します。 - 制御信号:
ドライバーへの制御信号によって、回転速度や方向を制御します。マイコンやPCからの信号で精密な制御が可能です。 - センサーフィードバック:
多くのブラシレスモーターシステムでは、位置や速度のセンサーからのフィードバックを利用して、より精密な制御を実現しています。
9.1.3 ACモーターの場合
ACモーターは、交流電源に接続して使用します:
- 単相ACモーター:
家庭用コンセント(単相交流)に直接接続して使用できるタイプもあります。 - 三相ACモーター:
工場などの三相電源に接続して使用します。一般家庭では使用できないケースが多いです。 - インバータ制御:
近年では、インバータと呼ばれる周波数変換装置を使用して、ACモーターの速度を可変制御することが一般的になっています。
9.2 効率的な運用のポイント
モーターを効率的に運用するためのポイントは以下の通りです:
9.2.1 適切な負荷範囲での運用
モーターには、効率が最も高くなる負荷範囲があります。一般的に、定格出力の60~80%程度の負荷で運転すると効率が最大になることが多いです7。
例えば、工場の送風ファンなどでは、必要以上に大きなモーターを使用すると、低負荷で運転することになり効率が下がります。適切なサイズのモーターを選ぶことが重要です。
9.2.2 適切な冷却
モーターは運転中に熱を発生します。適切な冷却を確保することで、性能低下や寿命短縮を防ぐことができます:
- 自然冷却:
小型モーターでは、モーター表面からの放熱(自然冷却)が一般的です。設置場所の通気性を確保することが重要です。 - 強制冷却:
中・大型モーターや連続高負荷の用途では、ファンによる強制冷却が採用されることが多いです。 - 水冷:
特に高出力が求められる用途(例:電気自動車の駆動モーターなど)では、水冷システムが採用されることもあります。
9.2.3 インバータによる可変速制御
モーターを常に一定速度で運転する必要がない場合、インバータなどを用いた可変速制御を導入することで、大幅な省エネルギーが可能になります:
- ポンプやファンの場合:
流量や風量が可変の場合、バルブやダンパーで絞るよりも、モーター速度を制御する方が効率が良いです。特にポンプやファンでは、回転数を下げると消費電力が回転数の3乗に比例して減少するため、大きな省エネ効果が得られます。 - 加減速の最適化:
頻繁に始動・停止を繰り返す用途では、急激な加減速は機械的ストレスと消費電力の増加を招きます。インバータによる緩やかな加減速は、機械寿命の延長と省エネルギーに効果的です。
9.3 具体的な使用例
身近な製品でのモーターの使い方の具体例を紹介します:
9.3.1 電動工具の場合
電動ドリルやドライバーなどの電動工具では、以下のような使い方が一般的です:
- 可変速トリガー:
引金(トリガー)の引き具合でモーターの回転速度を調整します。これはモーターへの電圧を調整する回路が内蔵されています。 - 正逆切り替え:
スイッチで回転方向を切り替えられます。ドリルでは穴あけと引き抜き、ドライバーではネジの締め付けと緩めに対応しています。 - トルク設定:
ドライバーなどでは、クラッチ機構によりトルクを制限する設定ができます。これにより、ネジの締めすぎを防止できます。
9.3.2 家電製品の場合
洗濯機や冷蔵庫などの家電製品では、以下のような使い方が実装されています:
- プログラム制御:
マイコンによるプログラム制御で、状況に応じてモーターの回転速度や方向を自動的に変更します。例えば、洗濯機では洗い・すすぎ・脱水など工程によって回転パターンが変わります。 - センサーフィードバック:
負荷や温度などのセンサー情報をもとに、モーターの動作を最適化します。例えば、冷蔵庫では庫内温度によってコンプレッサーモーターの動作を調整します。
モーターの適切な使い方を理解し、用途に合わせた制御方法を選択することで、性能の最大化と寿命の延長が可能になります。また、近年では省エネルギーの観点からも、インバータ制御やセンサーフィードバックによる最適制御が普及しています。
10. 注意点
モーターを安全かつ効果的に使用するためには、いくつかの重要な注意点を理解する必要があります。ここでは、モーターの取り扱いや使用方法における主な注意点について説明します。
10.1 機械的な注意点
モーターの機械的な取り扱いに関する注意点は以下の通りです9:
10.1.1 取り付けと固定
- ネジの長さ:
モーターを固定するためのネジは、適切な長さを選ぶことが重要です。長すぎるネジはモーターの内部部品を損傷する可能性があります。最大許容ねじ込み長さは、モーターの図面を参照するか、メーカーに確認することをお勧めします9。 - 平面度と固定力:
モーターを固定する際は、ねじ込みが偏らないようにし、モーター本体が変形するような力を加えないようにします。特に小径のモーターは、固定力によって回転数が変化することがあるため注意が必要です9。 - 通気孔:
モーターの通気孔を塞がないようにします。通気孔は熱を逃がすために重要な役割を果たしています。通気孔を塞ぐと、モーターが過熱して性能低下や故障の原因となります9。
10.1.2 シャフトへの部品取り付け
- ラジアルおよびアキシャル荷重:
ギア、ファン、プーリーなどをモーターシャフトに取り付ける際は、モーター本体やベアリングにラジアル荷重(半径方向の力)とアキシャル荷重(軸方向の力)がかからないよう注意が必要です。これらの荷重はベアリングの寿命やノイズに影響を与えます9。 - 圧入方法:
部品をシャフトに圧入する場合は、反対側の軸のみを支持し、モーターケースに接触しないようにします。また、軸にかかるアキシャル荷重も軸曲がりの原因となるため注意が必要です9。 - 負荷の種類:
ウォームギアからのスラスト(軸方向の力)や、ベルトドライブからのラジアル荷重、偏心カムからの揺動荷重などは、ベアリングに追加の摩擦を与え、モーターの性能と寿命に影響を与える可能性があります9。
10.2 電気的な注意点
モーターの電気的な取り扱いに関する注意点は以下の通りです9:
10.2.1 電源と接続
- 適切な電源:
モーターの定格電圧と電流に適合した電源を使用することが重要です。過電圧や過電流はモーターの焼損や性能劣化の原因となります9。 - 端子の取り扱い:
モーター端子を押し込んだり、引っ張ったり、曲げたりしないように注意します。特に指定がない限り、過度の力を加えないことが重要です9。 - はんだ付け:
モーター端子のはんだ付けを行う際は、端子周りが熱で変形したり、無理な力で曲がったりしないよう、素早く作業を完了させることが重要です9。
10.2.2 電気的保護
- 過負荷保護:
モーターは過負荷状態が続くと過熱し、巻線の絶縁が劣化して最終的に焼損する可能性があります。サーマルプロテクタなどの保護装置の使用を検討してください。 - 絶縁抵抗の低下:
カーボンブラシの摩耗や特定の環境・使用条件により、端子間や端子とモーターケース間、整流子スリット間の絶縁抵抗が低下する場合があります。モーターケースと電源のGND間で回路の焼損や短絡を防ぐための保護対策が必要です9。 - サージ保護:
特にインダクタンスの大きな大型モーターでは、電源オフ時にサージ電圧が発生する場合があります。サージアブソーバーなどの保護対策を検討してください。
10.3 環境と使用条件に関する注意点
モーターの環境と使用条件に関する注意点は以下の通りです9:
10.3.1 動作環境
- 温度条件:
動作温度が通常の室温と異なる場合は特に注意が必要です。高温環境ではモーターの冷却が不十分になり、低温環境では潤滑剤の粘度が高くなるなどの影響があります9。 - 湿度と結露:
高湿度環境や結露が発生する環境では、絶縁抵抗の低下や腐食の原因となります。防水・防滴対策が必要な場合は、適切な保護等級のモーターを選定してください。 - 振動と衝撃:
強い振動や衝撃がある環境では、モーターのベアリングや内部部品に悪影響を与える可能性があります。振動対策や適切な固定方法を検討してください9。
10.3.2 特殊な使用条件
- 連続運転と間欠運転:
モーターの設計上の使用率(デューティサイクル)を超えた運転は避けてください。連続運転が想定されていないモーターを連続運転すると、過熱による故障の原因となります。 - 高電圧・低電圧・規定外電圧:
規定範囲外の電圧での使用はモーターの性能・寿命・始動性に影響を与えます9。特に、バッテリー駆動の機器では、バッテリー電圧の変動を考慮する必要があります。 - パルス駆動(PWM含む):
PWM(パルス幅変調)などのパルス駆動は、モーターの性能や寿命に影響を与える可能性があります9。特にブラシ付きDCモーターでは、コミュテーションノイズとの干渉を考慮する必要があります。
10.4 メンテナンスに関する注意点
モーターのメンテナンスに関する注意点は以下の通りです:
10.4.1 潤滑と清掃
- オイルとグリース:
オイルやグリースがモーター内に入らないように注意してください。これらが内部に入ると故障の原因となる可能性があります9。 - 清掃方法:
モーターの清掃には、強い溶剤や水の使用を避けてください。特に通気孔から水や溶剤が内部に入ると、絶縁不良や腐食の原因となります。 - 異物混入防止:
モーター内部に異物が入らないように注意してください。特に金属粉や導電性の粉塵は短絡の原因となります。
10.4.2 部品交換と修理
- ブラシの交換:
ブラシ付きモーターでは、ブラシは消耗品です。定期的な点検と適切なタイミングでの交換が必要です。 - ベアリングの交換:
ベアリングも寿命のある部品です。異音や振動が増加した場合は、ベアリングの交換を検討してください。
これらの注意点を守ることで、モーターの性能を最大限に引き出し、長期間安定して使用することができます。特に産業用途では、予防保全の観点から定期的な点検と適切なメンテナンスが重要です。例えば、工場の生産ラインに使用されるモーターでは、計画的な点検と部品交換によって、予期せぬ故障による生産停止を防ぐことができます。
11. まとめ
本レポートでは、モーターに関する幅広いトピックを調査し、詳細に解説してきました。ここでは、各章で学んだ重要なポイントを総括し、モーターの理解を深めるための基礎知識をまとめます。
11.1 モーターの概要と重要性
モーターは電気エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換する装置であり、現代社会のあらゆる分野で不可欠な存在となっています6。19世紀初頭のファラデーによる電磁誘導の発見から始まり、テスラの交流モーターの発明などを経て発展してきました1920。
今日では、家電製品から自動車、工場設備、医療機器まで、社会のあらゆる場面でモーターが使用されています。省エネルギーや環境負荷低減の観点からも、高効率モーターの開発と普及が進んでいます。
11.2 技術的な理解のポイント
モーターを理解する上で重要なポイントは以下の通りです:
- 種類と特性:
モーターは大きくDCモーター(直流)とACモーター(交流)に分類され、さらに細かい種類があります。それぞれ特性が異なるため、用途に応じた適切な選択が重要です212。 - 動作原理:
基本的には、永久磁石と電磁石の力(引力と斥力)を利用して回転する仕組みです。継続的な回転のために、電流の向きを切り替える仕組み(整流)が重要です315。 - 構造と材料:
ロータ(回転子)とステータ(固定子)が基本構造で、電線、鉄心、絶縁材、永久磁石などの材料から構成されています412。 - 出力と性能:
トルク(回転力)と回転数の関係が重要で、同じ出力でも高トルク・低速型と低トルク・高速型があります。用途に応じた適切な特性の選択が重要です57。
11.3 実用的な知識のポイント
モーターを実際に使用する際の重要なポイントは以下の通りです:
- 用途と選定:
家電製品、電子機器、自動車、工場設備、医療機器など、様々な分野で利用されています。適切なモーターを選定するには、駆動機構、要求仕様、負荷条件などを考慮することが重要です68。 - 使用方法:
基本的な接続と駆動方法を理解し、効率的な運用のためのポイント(適切な負荷範囲、冷却、制御方法など)を押さえることが重要です10。 - 注意点と対策:
機械的、電気的、環境的な注意点を理解し、適切な対策を講じることで、モーターの性能と寿命を最大化できます9。
11.4 今後の展望
モーター技術は今後も進化を続けると考えられます:
- 高効率化:
エネルギー消費と環境負荷を低減するため、さらなる高効率化が進むでしょう。特に希土類磁石の活用や設計最適化による効率向上が期待されます。 - 小型・軽量化:
電気自動車やロボットなど、限られたスペースで高性能が求められる用途のために、小型・軽量でありながら高出力なモーターの開発が進むでしょう。 - スマート化:
センサーやIoT技術との融合により、自己診断や状態監視、最適制御などの機能を持つスマートモーターの普及が期待されます。
モーターは「縁の下の力持ち」として、目立たないながらも私たちの生活と産業を支える重要な技術です。基本的な原理は200年近く前に発見されたものですが、材料技術や制御技術の進歩により、今なお進化を続けています。
この調査レポートが、モーターについての理解を深め、適切な選定や効果的な利用に役立つことを願っています。モーターを理解することは、エネルギー効率の向上や機器の最適化にもつながり、持続可能な社会の実現にも貢献するでしょう。
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